無月経を甘くみてはダメ?!
女性にとって月経は普通に毎月くるものであり、妊娠準備という意味においても健康のバロメーターですが、ある不妊専門クリニックの院長先生によれば、婦人科の外来の半分は、「無月経」を訴える患者さんということです。
そんな「無月経」の種類や、生活の中での改善策についてお話してみたいと思います。
無月経とは?
性成熟期を迎えた女性で、月経がこない状態を 「無月経」といいます。
「無月経」のタイプも2つに分かれ、生まれてから一度も月経のない「原発性無月経」と、月経があったにも関わらず「無月経」の状態に陥った続発性無月経があります。
2つの定義は、以下のように分かれます。
●「原発性無月経」・・・満18歳を迎えても初経がこない状態
●「続発性無月経」・・・それまであった月経が3カ月以上停止している状態
「続発性無月経」は、妊娠、授乳、閉経などの生理的な変化による要因も含んでおり、病気の原因だけではない部分において注意が必要となります。
程度によって、下の2つに分けられます。
【第1度無月経】・・・ |
黄体ホルモンの分泌不足・・・ ※無月経が1年以下 |
【第2度無月経】・・・ |
卵胞ホルモンと黄体ホルモンの分泌不足・・・ ※第1度無月経の進行による場合もあり、治療が難しく、排卵が起こりにくくなります。 |
無月経の原因
■原発性無月経の原因
子宮や卵管が正常に発達しない先天異常、あるいはターナー症候群(通常2本あるX染色体が1本しかない)などの
染色体異常があります。また、視床下部(脳の1領域)、下垂体、卵巣の機能異常が原因の場合もあります。
ときに甲状腺の機能異常によっても起こります。
非常にやせている若い女性で、特に神経性無食欲症がみられる場合は、月経が来ないことがあります。
■続発性無月経の原因
視床下部、下垂体、卵巣、甲状腺、副腎、生殖器の機能異常によって起こります。
こうした器官が機能異常を起こす主な原因としては、腫瘍、自己免疫疾患、薬剤(化学療法薬、抗精神病薬、抗うつ薬など)の使用などがあります。
ホルモンの異常を伴うクッシング症候群や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)でも、月経が停止したり、不規則になったりします。
他の原因としては・・・
- ●胞状奇胎 (異常な受精卵や胎盤から発生した腫瘍)
- ●アッシャーマン症候群 (感染や手術による子宮内膜の瘢痕化)
- ● 精神的な悩みや周囲の状況によるストレス
などから、続発性無月経が起こることがあります。
ストレスは、脳がホルモンの分泌 によって行う卵巣機能のコントロールに影響を及ぼすからです。
過度の運動や極端な小食(神経性無食欲症など)も、脳による卵巣の調節に影響を及ぼします。
脳が、卵巣を刺激するホルモンの分泌を減らすように下垂体に信号を伝えると、その結果、卵巣からのエストロゲンの分泌量が減り、月経が停止します。
無月経の診断と検査
■原発性無月経の診断
満18歳を過ぎても初潮がない場合、原発性の無月経と診断されます。13歳になっても思春期の徴候がみられない場合や、思春期の開始後5年以内に初潮がみられない場合には、問題の有無を調べるため検査が行われます。
●続発性無月経の診断
妊娠可能年齢の女性(妊婦や授乳中の母親を除く)で、3カ月以上月経がない場合は、続発性無月経と診断されます。医師は診察により、思春期が正常に起きたかどうかを確認します。診察だけで無月経の原因が判明することもありますが、原因を確定するには他の検査も必要となることがあります。
血液中のホルモン濃度測定や頭部のX線検査で、下垂体腫瘍の有無を調べることがあります。特に診断を確定するためには、ホルモン検査が重要です。特に卵巣性無月経では、FSH・LHが高値を示すことで確定診断が下されます。
基礎体温は、排卵の有無の確認および黄体機能の評価を行う上で必須です。
また、卵巣や副腎の腫瘍を調べるためにCT検査、MRI検査、超音波検査を行います。
無月経の治療
■原発性無月経
体重減少性、ストレス性、乳漏性無月経 (特に薬剤性の場合)、甲状腺機能異常など、原因が特定できる場合には、その原因の除去や原疾患の治療をまず考えます。挙児希望がある場合には排卵誘発が必要となります。
(※挙児希望とは・・・妊娠・出産を希望するという意味)
挙児希望がない場合には、無月経が持続することに起因する「身体機能異常の回避」を目的とした治療を行います。
卵巣性無月経(染色体異常による無月経)による、排卵の回復は難しいケースが大半です。
▼ 無月経による身体機能の異常と治療法は下記の通りです。
◎ 子宮や膣の奇形 → 外科的療法
◎ 原発無月経における2次性徴の発育遅延 → カウフマン療法
◎ 第2度無月経における、骨粗しょう症のリスクの充進 → カウフマン療法
◎ 第1度無月経や無排卵周期症における、子宮内膜の悪性化 →ゲスターゲン療法
※カウフマン療法とは?
カウフマン療法とは、生理不順や無月経の人が、規則的な月経周期を人為的に作り出して、ホルモン欠落症状が起こらないようにする治療法です。
通常の低温期に当たる時期に、卵胞ホルモン(エストロゲン)を投与して、高温期に当たる時期に卵胞ホルモンと黄体ホルモン(プロゲステロン)を投与します。
※ゲスターゲン療法
「ゲスターゲン剤」を投与することによって、その後の数日の間に人為的に生理を起こさせる治療法です。
一般的には、経口の「ゲスターゲン剤」を処方されることが多いようです。月経周期の21~23日目にゲスターゲン剤(プロベラ、ヒスロン、デュファストン、ルトラール、ノアルテン、プリモルトN、ゲスタノン) を5~7日に連続で服用して消退出血を起こさせる方法です。
■続発性無月経
【第1度無月経】
内因性のエストロゲンが分泌されているので、クロミッドが比較的よく効きます。ただし、18歳以下の若年者もしくは挙児希望がない場合は、卵巣機能がまだ発達段階であることも多いため、カウフマン療法が選択されます。
カウフマン療法を3~6ヶ月続けて、十分にホルモンの補充を行います。 その後、内服をいったん中止し、リバウンド現象を利用して、自然排卵を期待します。
【第2度無月経】
基本的にカウフマン療法を3~6ヶ月行います。
治療後に自然排卵がなくても、第1度無月経となっている場合もあります。 第2度無月経から第1度無月経に移行した後は、クロミッドによる治療を選択することもあります。
カウフマン療法を行なっても、なかなか排卵周期がもどってこない難治性無月経も存在します。 この場合、挙児希望がなければ長期間無月経の状態とならないように、2~3ヶ月に一回の消退出出血だけを起こしつつ経過を観察します。
【高プロラクチン血症】
高プロラクチン血症の場合も無月経になることが多いのですが、その場合、プロラクチン値を正常化するための治療がまず行われます。そうすることで排卵、月経が再開する可能性があります。
無月経と生活習慣
周期は60日以内だが月経が不規則な場合や、ホルモン値がある程度は保たれているという場合は、薬を使うことを止めて様子を見ることもあります。生活習慣の改善を同時にしていくことで、卵巣の働きが戻りやすくなります。
【生活習慣の改善項目】
●禁煙する
●ストレスをため込まない
●足湯・入浴で血行を良くする
●睡眠時間の確保
●過度な運動の防止(適度な運動を継続)
月経不順は、体からの異常のシグナルですから、無視せずに生活を見直す事が大事です。