クリニックでの便秘治療って?!
便秘も軽度のものなら「生活習慣や食習慣の改善」により治せますが、場合によっては医師の診察と治療も必要な場合もあるようです。ストレスを溜めないことや適度な運動を心がけること、腸内環境を整えて便秘を解消するのがベストですが、今回は、実際の便秘診断や治療にはどんなものがあるのかをお伝えしてみたいと思います。
便秘の診断について
医療機関に行くと最初に症状を聞かれる「問診」から始まります。
排便のどこに不安・不満を持っているのか?
これらの症状がいつ頃から起こったのか?
どのような経過をたどっているのか?
それ以外に、食生活、睡眠時間、運動、学校や会社での環境、家庭での環境、今までに患った病気や飲んでいる薬などを聞かれます。
次にドクターは「触診」を行います。
お腹の張り、手でお腹を圧迫した時の痛み、腸の動き、肛門の状態などを調べます。
その後、疑われる原因をより詳しく調べるためのレントゲン検査や血液検査が行われます。
検査の一覧は下記の通りです。
1.体重・一般血液検査
正常 → 機能性便秘
異常 → 器質性便秘・症候性便秘
(体重減少、貧血、低蛋白血症、発熱、白血球増多などの異常)
2.糞便検査・血中CEA検査
黒色便、便潜血陽性、CEA高値 → 大腸癌
3.腹部超音波検査
拡張腸管、腫瘤、臓器腫大、
リンパ節腫大、腹水などの有無 → 器質性便秘の原因の検索
4.X線検査
●腹部単純撮影 : 異常ガス像、鏡面像の有無→器質性便秘
●経口小腸造影法 : バリウムの通過時間、排出時間、停滞部位、癒着、狭窄圧迫所見
●注腸X線検査(SOG:迅速簡便注腸法) : 機能性、器質性の鑑別
5.大腸内視鏡検査
●直腸鏡 : 直腸、S状結腸の器質性便秘の確定診断
●大腸ファイバースコープ゚検査 : 全大腸の器質性便秘の確定診断(生検)
6.自律神経機能検査・心身医学的検査
(メコリール試験・CMI健康調査・Y-G性格検査)
~過敏性腸症候群が疑われる場合
※「過敏性腸症候群」とは…
ストレス関連性の便秘で、自律神経が不安定になって起きる消化器の不調です。
便秘と下痢を繰り返して腹痛を伴います。
便秘の治療
■便秘の治療の三原則
便秘治療の三原則は...
1)生活習慣の改善
2)食生活の改善
3)便秘薬の使用
「生活習慣の改善」と「食生活の改善」に関しては、前回の記事で詳しく説明しましたが、ストレスを解消することや便意を我慢しないこと、十分な排便時間をとる、運動を心がけるなど、日常生活の中でできることをお伝えしました。食生活の面では、十分な水分補給や乳酸菌(善玉菌)の摂取、食物繊維の摂取などを心がけることにより、まずは腸内環境を整え、便秘を解消していきましょうというお話でしたね。今回は、便秘薬の使用による治療を解説いたします。
■便秘薬の使用
便秘も症状によって、薬の使用方法が代わります。
大きく4種類の下剤を活用することにより、その症状を解消させます。
しかし、やはり根治させるのには薬の常用は問題になります。
薬は最低限度の使用に留められるように、生活習慣、食習慣の改善に努めたいものです。
■機械的下剤
機械的下剤とは、基本的に便の水分を増加させて排便を容易にさせる薬のことです。
<膨張性下剤>
様々な野菜の繊維質などの膨張性下剤は、腸内で多量の水分を吸収することによって便の量を増やします。
便が増えることで自然な排便を促し、定期的な便通を促進するための下剤として安全に使用できます。
習慣性はほとんどありません。
【効果発現】・・・ 2~3日で最大効果が出る
【薬剤】・・・ 小麦ふすま、メチルセルロース、ポリカルポフィル、オオバコ種子(車前子)
<塩類下剤>
腸管内に高浸透圧性の物質を入れることで、腸管内の水分量を保つ大量の水分と併用すると効果的である。
水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどがある。
【効果発現】・・・ 等張液または低張液(薄めた場合):1~2時間、 高張液:8~10時間
【薬剤】・・・ 酸化マグネシウム(カマ)、クエン酸マグネシウム、ラクツロース、
ソルビトール、リン酸ナトリウム
<浸潤性下剤>
便の表面張力を低下させ、便が軟化膨張して排便が容易となりますが、単剤では効果が不十分のため、刺激性下剤との併用することが多いです。脂溶性ビタミン剤の吸収障害に注意が必要です。
【効果発現】・・・ 8~12時間
【薬剤】・・・ バルコゾル
<糖類下剤>
服用すると無変化のまま大腸に達し浸透圧作用で効果を示します。また腸内分解で発生した有機酸により腸蠕動(ぜんどう)が亢進し排便を促します。糖尿病患者には注意が必要です。
【薬剤】・・・ モニラック
■刺激性下剤
小腸より吸収され血行性または直接大腸に入り、大腸壁を直接刺激して収縮させることで便を移動させます。習慣性を引き起こすリスクがあるので、刺激性下剤による治療は短期間にとどめておくのが良いでしょう。
【効果発現】・・・ 6~8時間で半固形状便の移動を起こします。
座薬として用いると15~60分で作用が現れます。
【薬剤】・・・ センナ、アロエ、ピコスルファートナトリウム、カスカラ、ヒマシ油
■自律神経作用剤
自律神経に働きかけて、腸の働きを調整します。自律神経を介して腸を動かすので排便効果は高いが、体内吸収されるため、最近ではあまり使用しなくなっています。
特に不整脈のある人、妊娠中の人の使用はなるべく避けた方が良いでしょう。
【薬剤】・・・ ネオスチグミン、トラゾリン、メペンゾラート
■浣腸
浣腸は直腸と大腸下部から便を機械的に流し出します。真水や直接直腸を刺激するグリセリン等が浣腸薬として使用され、腸の蠕動(ぜんどう)運動を高めて排便を促します。
激しい腹痛、悪心や嘔(おう)吐、痔出血がある人や、心臓疾患のある人は注意が必要です。
【薬剤】・・・ グリセリン、薬用石鹸
便秘の種類もさまざま!
便秘だというと単なる1つの病気かと勘違いしがちですが、便秘も様々な原因があり、病態も色々と分類されることが分かったと思います。
便秘も自分の努力で治ればそれに越したことはないのですが、なかなか治らない、市販の薬を常用していたり、浣腸が手放せないという人は、便秘の裏に隠されている疾患や副作用が気になルため、クリニックでの診察をお勧めします。
便秘で悩んでいる方の食生活をみていると、やはり食物繊維の摂取が少ないことが多いようです。ご飯や海藻、煮野菜などは食物繊維が豊富で便の量を増やし、スムーズに排出される助けになります。 そういうものは意識的に摂取して、今日から「スッキリ美人」を目指しましょう。